真珠ができるまで

真珠ができるまで

戦前は真珠養殖用の真珠母貝(玉貝)には、地元の海女さんが海に潜って天然母貝を取って利用していました。しかし、真珠養殖業者の増加とともに母貝不足となり、6月から7月に天然に流れる種貝を杉の葉に付着させた貝を、大きく育てて利用するようになりました。その後真珠貝の弱体化がすすみ、また平成8年から赤変化による斃死も増加したため、現在では大部分が人工採苗された強化アコヤ貝(1mm程度)を4月頃に仕入れ、掃除とカゴの入れ替えを何度も行い、2年後の4月から利用できる(一部1年後に利用できる)母貝に育てます。



アコヤ貝は海に吊っていると、カキ・フジツボ等の付着物がたくさん着くため、貝掃除機・貝掃除ナタを利用して付着物を外す作業と、アコヤ貝を濃塩水に漬ける塩水処理や真水に漬ける水処理も行います。


アコヤ貝は水温が10℃以下になると死亡するため、秋か春の間に暖かい漁場へ移動させて春を待ちます。

挿核用の母貝は、挿核手術によるショック症状を避けるための「抑制(卵止め)」と「卵抜き」の仕立てを行います。「抑制(卵止め)」とは母貝を秋からカゴに窮屈な状態で育成して、春の挿核まで活動を抑え卵を成熟させない方法です。「卵抜き」とは母貝に刺激を与えて放卵させる方法で、5~7月に挿核する母貝に用います。

挿核手術の準備として、仕立てが終わった母貝の貝殻を開けたままにしておくために、くさび形の栓をさす作業を「栓さし」と言います。栓さし作業をするとき、貝口器で無理に貝殻を開けると貝の閉じる力が強いため、貝殻が割れたり貝柱が切れたりするので、栓さし前に「貝立て」の作業をします。「貝立て」の方法は貝立て箱に貝をぎっしりとつめて立て長時間貝を苦しめた状態で海中に吊るし、その後海水で満たした水槽内に開放すると、貝は大きく口をあけます。この時、貝口器を入れくさび形の栓をさします。

 

真珠は生殖巣の真珠袋の中で生まれます。アコヤ貝の外套膜は真珠質を分泌する機能があります。この外套膜の小片をピースと呼びます。



真珠核は、主にミシシッピー川水系に生息しているイシガイ科カワボタンガイ亜科に属する淡水産二枚貝の貝殻を原料にして、真円に加工して使用します。



「核入れ」とも言いますが、アコヤ貝の生殖巣まで先導メス・ピース針・核挿入器を使用してピースと真珠核を挿入して、真珠袋を形成させる手術をします。

 

挿核手術を行ったアコヤ貝の手術後の体力を徐々に回復させるために、養生カゴに入れて安静状態にします。



きれいな真珠を作るのには、アコヤ貝の生殖巣中にある真珠核の位置が重要になります。そのためレントゲンを利用して真珠核の位置を調べる作業も行っております。

挿核手術後に養生期間が済んで回復してきたアコヤ貝は、沖合の真珠いかだへ段のネットに入れて吊るします。この状態で7ヶ月から1年6ヶ月の間、海の水温・酸素量・比重・プランクトン量などの漁場の変化に気をつけて、巻きの良い真珠を作るため貝掃除を繰り返し行います。

 

真珠の「テリ」「色」「巻き」の出来具合を調べるため10個程度の試験むきを行い、その結果により真珠の採取時期(収穫時期)を決定します。これらの真珠の収穫を浜揚げと言います。主に12月と1月に行います。



浜揚げが終わると、商品珠と廃棄珠に分け、商品珠は大きさ・色・形・キズによりいろいろな種類に選別されます。真円になった「テリ」「色」「巻き」の良い真珠は一部しか生産されません。


12月から2月にかけて真珠の入札会が全国で開催され、真珠バイヤーとの取引が盛んに行われます。小さい貝から育てて真珠の出来上がったこの時期が、真珠養殖業者の真珠の価値が問われる時であり、1年で1番活気のある時期でもあります。